「昔からある電験参考書」はお勧めできない、と以前の記事に書いた。
その理由としては「現在の試験内容に沿っていない」、というのが大きな理由だが、
理由は他にもある。
電験参考書は誰に向けて書かれたものか?
「昔からある電験参考書」は、概ね「偉い先生」が執筆したものだ。
「偉い先生」とは、例えば大学の教授などであるが、大学の教授は普段、誰に対して授業を行っているだろうか?
答えは「電気科の大学生などに向けて」、である。
つまり「偉い先生」は、電気の基礎知識の豊富な電気科の生徒に講義するのが本業だ。
ところで、電験三種を目指す人は、電気知識の豊富な電気科の生徒だけだろうか?
決して、そんなことはない。
電験受験者には電気が苦手な者、さらには、数学さえも苦手な文系出身の者までいる。
そして、電気のことについて1から教わらないとわからない人も多くいるはずだ。
はたして「偉い先生」が電気知識ゼロの者に対して、わかりやすく教えることができるのだろうか?
たぶん難しいと思う。
つまり、昔からある参考書は、「偉い先生」が執筆したものなので、電気知識が乏しい者に対して、わかりやすくは書かれていない、
というのが、昔からある参考書を勧められないもう1つの理由でもある。
『電験参考書の出版社』と『偉い先生』の関係
その他に、『出版社』と『偉い先生』の力関係についても考えてみよう。
『出版社』が参考書の出版を思い立った場合、どうしていただろうか?
たぶん、『偉い先生』に執筆をお願いしたのだろう。
『偉い先生』はお願いされたわけだから、「よし書いてやろう。」という気持ちが少なからずあると思う。
つまり、力関係で言えば『出版社』より『偉い先生』のほうが上にある。
つまり『出版社』は、『偉い先生』の書いた原稿に対して『ダメ出し』ができない、もしくは『ダメ出し』を、しにくい状況にある。
『出版社』としては出来上がった原稿を見て、「先生、この部分は難しすぎるので、もっとわかりやすく解説をお願いします。」と言いたいところだろうが、下手なことを言えば、先生のご機嫌を損ねて「もうお前のところには執筆してやらない!」と言われるかもしれない。
1度や2度は原稿の書き直しをお願いするが、そう何度も書き直しをお願いすることはできないだろう。
ということは、『偉い先生』の書いた本は、わかりやすい内容にはならず、独りよがりの内容になる場合がある、ということだ。
本当にわかりやすい電験参考書は?
では、本当にわかりやすい参考書を作るにはどうしたらいいのか?
本当にわかりやすい参考書を作りたいのであれば、電気初学者の意見も十分に取り入れることが必要だ。
そして、複数の人間が執筆に関わっていれば、独りよがりの内容にはならないだろう。
では、以前紹介した参考書について見てみよう。
実教出版の 電験三種徹底解説テキスト は、比較的わかりやすい参考書と言える。
この本は執筆者が特定されておらず、電験三種教育研究会編となっている。
つまり、この本の執筆には、専門家を含め多くの人が関わっていると思われる。
不思議な公式語呂合わせが載っていることからも、『偉い先生』以外にも執筆に加わった者がいることが推察される
また、TAC出版の 皆が欲しかった教科書&問題集 も、著者は偉い先生ではなく『TAC出版開発グループ 編著』と記されている。
TAC出版は、様々な資格教育に力を入れている出版社である。
また、電験参考書研究会の 誰でもわかる電験参考書 は、ホームページで語られているが、元受験者が専門家の監修を受け、また他の受験者の意見を多く取り入れて参考書研究会として執筆されたものになっている。
したがって、これも『偉い先生』が執筆したものではないので、わかりやすい。
結論としては、
『偉い先生』が執筆した参考書は、独りよがりでわかりにくいものが多い。
それに対して、執筆者が特定されずに複数の人間が執筆に関わった参考書は、説明が詳しくわかりやすい、ということが言える。
電験参考書を購入する場合は、最近出版されたもので、執筆者が特定されないもの(または複数の人間が執筆したもの)を購入すれば、外れは少ないと言えるだろう。